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近年、ライブチケットの高額転売行為が深刻な社会問題となっており、取締りも厳しくなってきています。

最近では、今年8月に10年ぶりに復活するELLEGARDENのツアーチケットがなんと1枚50万円近い金額で転売されており、ネット上では怒りの声が相次いでいます。

2016年の夏には多数のアーティストが連名で『私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します』という共同声明を発表しましたが、そもそもなぜ転売行為がこれほど問題になっているのでしょうか?

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転売行為については、需給バランスの調整機能を果たしているため経済学上問題ないといった意見もある一方で、倫理上の問題や古物営業法や迷惑防止条例といった法令上の問題などさまざまな問題点が指摘されています。

今回はタイトルの通り「ライブチケットの高額転売はアーティストからお金を盗むことと同じ」であるという点について指摘したいと思います。

一見「ナニイッテンダコイツ」と思われるかもしれませんが、これは「観客のライブイベントに対する留保価格は一定なので、転売屋の存在によりアーティストに機会損失を与えている」と言い換えることができます。

ますます「マジデナニイッテンダコイツ」と思われそうなので、用語について補足します。

留保価格・・・消費者がその商品やサービスのために支払ってもよいと考える上限額
機会損失・・・売る側が本来得られるべきであった利益(稼ぎ損ない)

例えば、あるバンドのライブチケットが1万円で販売されていたとします。

そのバンドのファンのAさんは、そのライブのために1万5千円までなら出してもよいと考えていた場合、Aさんのそのライブイベントに対する留保価格は1万5千円ということになります。

Aさんはチケットを1万円で買って、ライブ会場でCDやTシャツなどのグッズを5千円分買おうと思っていましたが、チケットの抽選に転売目的の申し込みが殺到したため、残念ながら抽選にはずれてしまいチケットを買うことができませんでした。

ところが、Aさんは後日ネットオークションサイトでチケットが1万5千円で売られているのを見つけ、そのチケットを転売屋から購入したためライブに行くことができました。

しかし、当初の予定よりチケット代が高くついてしまい、チケット代だけで留保価格の1万5千円に達してしまったため、買おうと思っていたCDやTシャツなどのグッズを買うのは諦めてしまったとします。

この場合、そのバンドが本来なら(転売屋が存在せずAさんがチケットの抽選に当たっていたら)得られるべきであった利益(CDやTシャツなどのグッズ代5千円)が、そのバンドではなく転売屋の手元に入ったということになります。

つまり、転売屋の存在によりそのバンドに5千円分の機会損失を与えたということになります。

これは極端な言い換えをすれば「転売屋がアーティストから5千円を盗んだ」と言い換えることができます。

ただし、現実問題としては、転売屋がいなかったとしてもAさんがチケットの抽選に当たるかはわからないし、Aさんが本当にライブ会場でグッズを買うかわからないため、機会損失の金額を具体的に算定することは困難ですが、少なくとも転売屋がいなければ抽選に当たる確率は高くなるし、ただの転売目的でないファンであればグッズ代も含めたライブイベントに対する留保価格は高くなるため、転売屋の存在がアーティストに機会損失を与えていることは間違いありません。

そして、注意しなければならないのは、転売目的でないファンの一人として買った人でも、転売屋になり得るということです。

もしあなたが、あるバンドのファンだったとして、1万円で買ったそのバンドのライブチケットを3万円で買いたいという人がいたとしても、本当にそのバンドのファンであるなら絶対に売らないでください。

その3万円で買った人がCDやTシャツなどのグッズを買うのを諦めてしまったり、またさらに別の人に転売するという可能性もあり、いずれにせよ「そのアーティストからお金を盗んでいるのと同じ」ことになります。

大げさな表現かもしれませんが、チケットの高額転売問題はアーティストにとってはそれくらい深刻な問題であるということです。

 


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