音楽業界では「CDが売れない!」と叫ばれ始めて久しいですが、今やCDどころかダウンロード販売すら伸び悩んでいるのが現状です。
これは、ネットが急速に普及した現代では、人々が音楽に対して求める役割が大きく変わってきているということが原因のひとつだと考えられます。
今回は、ネット時代の音楽の役割について考えてみたいと思います。
CDが売れない理由
CDとは、「コンパクトディスク」の略で、録音した音楽をデジタル情報として記録するメディアのことをいいます。
ネット環境が整備されていなかった時代には、音楽をオーディオプレーヤーで再生したり、パソコンにmp3データを取り込んだりするためには、CDという物理的な媒体を通してデジタル情報を読み込む必要がありました。
ところが、ネット環境が整備された現代では、ネットを通じて音楽をダウンロードできるようになりました。
ダウンロードの方が、CDのような梱包や配送の費用がないため安く購入でき、しかも、CDと違っていつでもどこでもすぐに購入できます。
そのため、CDの情報の媒体としての物理的存在価値は低くなってしまい、CDは全然売れなくなってしまいました。
生まれたときからすでにネット環境が整った時代で育った今の若い子にとっては、もはやCDは過去の産物であるといえます。
ダウンロード販売も売れない理由
じゃあダウンロード販売は売れているのかというと、実はそうでもなく、ダウンロード販売も売れ行きは伸び悩んでいます。
これには、大きく分けて2つの要因が考えられます。
1つ目は、YouTubeなどの動画サイトで無料で聴けるようになったことです。
今や音楽を聴くために、CDをオーディオプレーヤーで再生したりiTunesなどのライブラリから自分で入れた曲を再生するのではなく、動画サイトを開いて好きなアーティストの曲を検索して聴くというスタイルが当たり前になりつつあります。
しかも、このような動画サイトは基本的に無料のところが多いので、わざわざお金を出して音楽をダウンロードする人は少なくなってしまいました。
2つ目は、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスが普及したことです。
音楽ストリーミングサービスでは、月額980円というCDの半分程度の超低価格で数百万を超える楽曲が聴き放題です。
どのアーティストの曲が何でもあるというわけではありませんが、かなりたくさんの楽曲がストリーミングで配信されています。
ストリーミングの配信曲で満足している人も多いため、わざわざ月額料金よりも割高でダウンロードをする人は減ってしまいました。
音楽そのものの価値が下がったわけではない
上記のように、わざわざ高いお金を出して音楽を購入する人は減ってしまいましたが、これは音楽そのものの価値が下がってしまったということでしょうか?
これについては、僕はそうは思いません。
毎年、世界中のアーティストたちが数々の名曲を生み出し、リスナー数は増加しているのに、音楽そのものの価値が下がっているとは思えません。
確かに、音楽業界の市場規模は年々縮小していますが、これは新しい時代に対応したビジネスモデルが未成熟で収益化がうまくできていないからだと思います。
「共感」や「つながり」が求められる時代に
動画サイトやストリーミングサービスの普及によりわざわざ音楽に高いお金を払う人は少なくなりましたが、これは逆に考えれば、多くの人が様々な音楽に簡単に触れられる機会が飛躍的に増えたととらえることもできます。
今の時代は、好きな曲を発見したら、SNSを通じて友達や家族と簡単に共有できる時代です。
また、SNSを通じてアーティストと直接コミュニケーションをとったり、ファン同士で簡単に交流ができる時代です。
このような時代において、音楽に対して求められる役割は、音楽を通じた「共感」や「つながり」に変わってきているといえます。
例えば、アイドルと直接話ができる握手会が流行ったり、同じ動画を見た人同士コメント機能で感想を共有できるニコニコ動画が流行ったり、ファンが一堂に会するからこそ盛り上がるフェスやライブが年々大規模化していたり、同じ趣味の仲間が集まる同人即売会イベントが大規模化していたり、TikTokやmusical.lyなどの 黒歴史量産アプリ 音楽を通じた交流アプリが流行ったりしているのも、音楽に「共感」や「つながり」が求められるようになったことの一例だと思います。
SNSやライブを通じたファンとの交流が重要
音楽に対して求められる役割が「共感」や「つながり」に変化している現代においては、ミュージシャンは以前のように作った曲を一方的に届けるだけではなく、SNS等を通じてファンと積極的にコミュニケーションを取ったり、ライブイベントをできるだけ多く開催することが、売れ残っていくために重要になってくるでしょう。